コラム

ラジオに聞きたい曲をリクエストする

「最近、何で音楽聞く?」

こう聞かれた時、皆さんはどう答えるだろう。

近年、Apple Music、Spotifyなどのサブスクリプションサービスが、世界中のありとあらゆる音楽を配信している。月額1000円で、数千万曲もの音楽が聴けるこのサービスは、人が音楽を聴くハードルを撤去したといっても過言ではない。ポケットの中にあるスマホから、いつでも、どこでも、自分が聞きたい音楽を聴ける。
また、数年前まではフルサイズで公開されていなかったMVやPVも、今では当たり前のように、その全貌をYouTubeで視聴することができる。
音楽は今、世界中で、より自由に、より密接に、人々の生活に楽しさを与えている。

そして、これはラジオ番組にも言える話だ。

ラジオなんて家にないという方も多い時代ではあるが、安心してほしい。サブスク同様、ラジオを簡単に聴けるサービスも、今の時代にはある。

それが、Radikoというアプリケーションである。
スマホやPCさえあればラジオを好きな場所でラジオを楽しむことができ、タイムフリー機能を使えば、一週間以内に放送された番組をいつでも聴ける。

では、音楽を聴きたいときに聴ける時代に、わざわざラジオにリクエストしてみるなんて、そんな回りくどいことをする必要があるのか。

必要はない。けれど、そこにはサブスクを使って音楽を聴くよりも魅力的なエッセンスがある。

好きな曲を必ず聞けるわけじゃない

いや、それってむしろ欠点では? 
と、思う方が大半だろう。

ラジオに曲をリクエストしたからといって、必ずしもラジオで採用されるわけではない。
しかし、このような難点があるからこそ、得られる楽しさがある。

はがきや、電子メールで、曲を聴いて感じる想いや浮かびあがる思い出を、自分の言葉で書き連ね、ラジオ局に投稿する。少しドキドキしながら放送を待ち、日々を送る。

放送が始まって、リスナーのリクエストコーナーになり、はがきが読まれるか否か、と胸をざわつかせ、パーソナリティの声を聴く。
そして、ラジオネームが読まれ、込めたメッセージとともに曲が流れた瞬間、感じる喜びと感動は、普段自ら再生ボタンを押して聴く時よりも、はるかに大きい。慣れ親しんだ曲であっても、違った一面を感じられる。

もちろん、読まれなかったときのショックもあるだろうし、そもそもリクエストが通らないことの方が圧倒的に多い。けれど、それは音楽を楽しむという点において魅惑的なスパイスとなる。曲を聴くために、わざわざ一喜一憂できるのだ。

自分の知らない情報に出会う

知らない曲を聴くというのは、サブスクが繁栄している今の時代、少々ハードルが高いと感じる。友達に良いバンドをおすすめされたり、テレビのCMで流れていた曲を気にいったり限り、新たな曲を開拓する機会は割と少ない。好きな曲を自由に選べるからこそ、起こる現象だ。

しかし、ラジオは、最新の楽曲から、往年の名曲まで流れる。受動的に様々なジャンルの曲を耳にする機会を与えてくれる。知らない曲を耳にして、気に入るという機会も多い。”商業的だから”などと、自分勝手に避けてきたアーティストの楽曲だって、その良さを見つけられる機会になるかもしれない。

これは、曲に限ったことではない。番組にもよるが、ラジオでは地域で開催されるイベントや、飲食店の紹介等、ローカルな情報も放送される。インターネット検索でも出てこないような情報も発信される。そもそも、特定の店の情報やイベントの情報を知らない限り、インターネット検索もできない。
この楽しみ方には「知る機会が増える」という付加価値もついてくる。

 

音楽を楽しむための遠回り

今回紹介したのは,音楽をもっと楽しむための遠回りな方法である。音楽を聴くという行為だって、物理的ではないにしろ、遠回りすることができる。
様々なものごとを簡単に体験できる現代。便利な近道もあれば、めんどくさい回り道もある。あえて遠回りな道を歩んでみれば、予想もつかなかった楽しさに出会えるかもしれない。それはとても素敵で、ロマンティックで、心地よい。
現代を生きる我々には、選択肢が豊富に与えられている。その中から自分が好きなことを知り、触れることで日常を潤してくれるのなら、それはもっと素敵なことだと思う。